丸子勝基

2020年5月3日

外部取締役の養成

高度経済成長を遂げた昭和は令和を迎えた今日から顧みるとみんなが一斉に日本経済復興の神輿を担ぎ、みんなが汗をかきながら、着実に、石段を駆け登り、企業としての成長、市民としての幸せを享受できたダイナミズムの時代であった。それは日本企業の家族主義的な年功序列制度、終身雇用制度、企業内組合に支えられた経営システムそのものの強みを生かしたものだった。それは正に筆者の青春期から壮年期の時代背景だった。そしてその後の平成の三十年間は日本経済の停滞とそれに伴い海外市場への進出に精を出したが、日本企業としての革新的なイノベーション活動は十分ではなく、海外の企業と比較し、企業の経営力や稼ぎ力に疑問符が付されるようになった。

18年に改訂されたコーポレートガバナンスコードの精神をどれだけ真剣に捉え、自らの企業にどう生かすかは、執行経営責任者の大きな責務です。ガバナンスコードが求めているのは「持続的な成長と中長期的な企業価値向上」です。それは株主をはじめとするステークホルダーとの会話を通し、企業の価値を高めるための処方箋でもあります。いくつかの処方箋の中でも重要な事は社外取締役は経営者、最高業務執行責任者の選解任の権限をもっているという事です。また社外取締役が過半数を占めない取締役会の場合には指名諮問委員会を設置すべきと言われています。つまりこれまでは現在の最高執行責任者が年功序列的に次期社長(CEO)を自ら選任できたわけですが、ガバナンスコードを遵守する場合、外部取締役が次期社長の決定権限を持つことになるわけです。

しかし、最高業務執行責任者を外部の取締役の方々がどんな基準でその時に必要な人材を適切に選解任できるのでしょうか。その前に会社側が外部取締役を選定する際の選定基準が重要です。その際に独立的な外部取締役を選定することは、企業にとってどんな選択肢があるのでしょうか。現実的には、上場企業の取締経験者や弁護士、会計士等、経営学者の方々が多いようですが、最高執行責任者の選解任という重要な役割を果たす上での外部取締役としての強い責任感、見識をもっているかどうかはどのように把握されて選任されているのでしょうか。そこに外部取締役としてのばらつきをなくすために一定の外部取締役としてふさわしい経験を積まれた方に対して外部取締役としての責務、知識をもってもらう一定期間の研修・養成の機会とその認定機関のような場が必要ではないでしょうか。外部取締役の成り手がいない事や掛け持ちの外部取締役の解消等の問題をどう解決すべきかについて今後、重要な課題になるかもしれません。

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