私は住友スリーエム㈱(現スリーエムジャパン)に29年勤務した。その間、
1981年9月に社長就任された故奥田英博氏の思い出が特に印象深い。奥田社長とご一緒しご出身の富山日本電気㈱の工場見学研修を受けた事を思い出す。当時から同社ではその日の損益状況が翌日にはマネジメントに報告され、問題があればすぐに報告され改善に着手されるという生産管理システムがあった。毎日の損得が次の日には報告されるシステムには脱帽だった。また在庫を極力もたないトヨタ生産方式のストックレス生産を実現していた。当時の私は納期管理、品質管理、在庫管理、外注管理全てを担当する電子部品組立の生産管理責任者だった。奥田社長自ら説明のために同席いただいた。当時の住友スリーエムの
生産管理はまだまだぬるかった。この工場見学は私から直接社長に申し出て、実現したもので、システム改善意欲に燃えていたのだが、その半年後に本社異動が決まり、奥田社長の好意と改善意欲に応えられなかった事が残念な思い出として残ってしまった。
奥田社長は本社での管理職全体会議があるといつも大事な事を繰り返し話された。「在庫が多い。減らしなさい。販売目標と実績の乖離を無くしなさい。」しかし、大事な事を毎回繰り返しお話する事は根気と情熱のいる事で、それだけ経営上重要な事なのだという事を当時どの程度理解していただろう。大事なことは耳にタコが出るほど、伝えるのが奥田社長にとっては重要だったのである。在庫を減らすことがいかに重要か住友スリーエムではそれまでだれも強く指摘しなかったのです。それだけに刺激的で鮮明な記憶となっています。業務のムダや非効率が全て在庫の推移に表現されること。何故トヨタはストックレス生産をめざしたかがそこにあることを知ったのです。
住友スリーエム時代の歴代の社長の中でもっとも業務改善に意欲を示され貢献された社長といえば故奥田英博社長だと主張したい。
すでに亡くなられて久しいが多くの事を教えて頂いたことに感謝とお礼をお伝えしたく書かせていただきました。(写真は故奥田英博社長)
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