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企業のガバナンスについて

経営研究所主催のガバナンスフォーラムで「2019日本企業ガバナンスの現況と課題そして変革のシナリオ」を受講させていただきました。10回にわたる一流講師人による豊富な実務を通した知見に触れることが出来たことは感激であり、小さな企業を育てただけの浅学の身にとっては久しぶりにアカデミックな雰囲気で大変新鮮かつ刺激的な一年間でした。感想を次のようにまとめました。


1.)ガバナンスの主役はやはり社長(CEO)

経営者は成り立ちによって概ね次の4つに分類され、一般にそれぞれの経営者により経営理念についての認識と事業戦略構築力に違いがあるよう推測されます。

①  自ら起業し成長を成し遂げた創業者による経営の場合、経営理念はもと

もと創業当時からの明確な経営信念の下、持続的な戦略的成長をめざし、

企業価値向上を高めようとする創業思想に導かれている場合が多い。     

② 創業者の親族が代々経営者として引き継がれる親族経営の場合は創業

者の経営理念と戦略がそのまま継承され続ける場合が多い。

③  内部昇格経営者、いわゆるサラリーマン経営者による経営の場合には創

業経営者と比較すれば経営に関する意識の違いが生まれ、経営理念や戦略に関する意識も 相違がある場合が多いのではないでしょうか。

④  外部から招聘された実力派経営者の場合はその経営者のそれまでの経

験からくる知見が良かれ悪しかれ経営に強く活かされる事が多いかもしれない。

日本の上場企業の多くの経営者は上記③の内部昇格経営者です。日本の昭和時代の高度経済成長を支え、そしてその後経済低迷の平成時代の経済低迷の一因ともなった社員の一括採用、終身雇用、年功序列の家族的制度の下、育てられた彼らがいかに自社の持続的成長のための確かな経営理念を持ち、企業価値向上のために戦略性をもったリーダーシップを発揮できるかが日本経済再生の鍵を握ります。そこにコーポレート・ガバナンス・コードの重要な存在意義があります。

コーポレート・ガバナンスの狙いは日本企業の持続的成長と企業価値の向上にありますが持続的成長を実現するには成長戦略を構築し、実行できる企業のリーダーの資質と力が必須です。従って成長戦略を自らの言葉で語り、そしてそれを組織の長として実現できる力のある社長(CEO)が存在しなければ例え優秀な外部取締役を揃えようと持続的成長は難しい。日本企業が持続的成長を果たせるかは自社の成長戦略を自分の言葉で語り、実行できる社長(CEO)にかかっていると思います。

その観点から社長(CEO)の条件として次の事を要求したい

1. 理念経営の重要性を理解し実践できること

2. 財務がわかり、事業戦略を自らの言葉で語れること

3. 事業戦略を実現する強いリーダーシップをもっていること

2.)外部取締役の自覚

 通常外部取締役は著名な経営者や弁護士、会計士、学者等で構成されているようですが、果たしてどの程度、独立性を保持し、本来の機能である監督機能を果たしているのでしょうか。コーポレート・ガバナンス・コードをどの程度理解し、またどの程度当該企業を理解し、受け身でなく、能動的に役割を果たしているのか疑問を感じます。一人で数社も外部取締役を兼任しているため、取締役会にも参加できなかったり、急な要請に対応できなかったりすることはないでしょうか。また外部取締役を選定するのは代表業務執行役員の社長(CEO)である場合が多いようです。社長(CEO)から選定された外部取締役は常時、独立性をもってどの程度会社と対峙できるのでしょうか。取締役の過半数を外部取締役が占める状態に早める必要があります。また外部取締役の他社との兼任は二社までが妥当ではないでしょうか。

3.)組織はリーダー次第

 暗い職場(組織)は存在価値が無い、これが私のこれまでの多くの職場(組織)経験で学んだ結論です。明るい職場には工夫や改善が生まれ、一緒に働く喜びが生まれ自己の成長、職場の成長、会社の成長があります。そこには当然規律を大切にした厳しさもありますが。逆に規律も明るさの重要な条件です。この職場の明るさ、暗さの違いの出る要因は何でしょうか。

小生は日本経済成長期の1964年から1998年までサラリーマン生活を充足し、その後、56歳で起業、小規模ながらも約20年、内装材の事業を

経験し、数年前、大手塗料商社に事業譲渡し、現在に至っています。これまで多くの組織の内外で仕事をして参りました。サラリーマン時代はファスナーの吉田工業㈱で営業を、そしてその後の住友スリーエム㈱(現在のスリーエムジャパン)では、原価部、内部監査室、生産管理部、マーケティング部、営業部等に配属され、企業内の組織経験は多岐に渡り、その時、その時の組織の長のリーダーシップのあり方は当然ながら十人十色でした。勤務した両社とも、活気にあふれた素晴らしい会社でしたが、それぞれの部門組織リーダーの意識や行動が職場の明るさや士気に与える影響は非常に大きいものがある事を実感しました。

働く立場としては、ポジティブな気持ちで、明るく、仲間と相互啓発できるような職場でありたいものですが、なかなかそういう訳には行きません。その鍵を握るのはその組織を任された部長、事業部長でした。明るい職場か暗い職場かはその組織のリーダーの理念と振る舞い次第です。

しかしながらその職場のリーダーもその企業のトップである社長(CEO)次第です。

4.)優れた社長の条件とは

小生は社長としての事業経験は約20年あります。社員が20人未満の小さな企業でしたが、大企業であれ小規模企業であれ、社長というリーダーの条件はあまり変わらないと考えています。その時期の反省も込めて優れたリーダー、優れた社長(CEO)の条件について自己の経験から挙げてみます。

① 経営理念が明確でその実現にリーダーシップを発揮できること

② 財務が分かり、そのうえで、事業戦略を自分の言葉で語り、事業の行く末を内外に提示できる事。つまり大企業の場合はコーポレート・ガバナンス・コードの精神を理解し、その実践に熱心であること。

 ③ 危機管理感覚が敏感であり社員の安全や衛生を第一に考えること。

 ④ 現場主義を大切にし、第一線で働く社員を大事に思う事。

 ⑤ 明るく誠実、ユーモアもほしい。

5.)まとめ

企業では社長(CEO)、地方行政では首長、国家では大統領や首相の理念や行動を伴ったリーダーシップの重要性は現代の新型コロナウイルスに対する各國の多くのリーダーの実態を比較するまでもなくそのリーダーシップの重要性は社員や国民の命や生活に大きな影響を与える事を教えています。それは平常時であれ今回のような有時であれ同じです。コロナ後の日本経済再生のためにも若く理念に燃えた多くのリーダーの育成が欠かせないと考えます。(写真はイメージ)


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